溶接のアンダーカットとは?発生する原因と防止策、補修方法を詳しく解説!

こんにちは、溶接棒・溶接機材の通販専門店 WELD ALL(ウエルドオール)です。
溶接が終わってビードを見てみると、ビードの縁に沿って溝のようなへこみができていた、という経験はありませんか。
この溝状の欠陥は「アンダーカット」と呼ばれ、見た目が悪くなるだけでなく、溶接部の強度を大きく下げてしまう原因になります。
今回は、アンダーカットとはどのような欠陥なのか、なぜ発生するのか、そして防止するためのポイントと、できてしまったときの補修方法までを詳しく解説します。
目次
アンダーカットとは?

アンダーカットとは、溶接ビードの止端(ビードと母材の境目)に沿って、母材が溝状にえぐられたまま溶着金属で埋まらずに残った欠陥のことです。
アークの熱で溶けた母材の部分に、溶けた溶接棒やワイヤー(溶着金属)が十分に流れ込まなかったときに発生します。
ビードの片側だけに出る場合もあれば、両側に出る場合もあり、溶接の表面に現れるため、目視でも確認しやすい欠陥です。
ビードについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
アンダーカットが問題になる理由
アンダーカットが問題になる理由は、主に次の3つです。
- 母材の断面積が減り、溶接部の強度が下がる
- 溝の部分に応力が集中し、疲労割れの起点になりやすい
- 溝にさびや汚れがたまりやすく、耐食性や外観が悪くなる
特に、繰り返し荷重がかかる構造物では、わずかなアンダーカットでも疲労強度の低下につながります。
溶接の検査基準では、アンダーカットの深さや長さに許容値が定められていることが多く、許容値を超えたものは補修の対象になります。
オーバーラップとの違い
アンダーカットとよく一緒に語られる欠陥に「オーバーラップ」があります。
オーバーラップは、溶着金属が母材に溶け込まずに、母材の上にかぶさるように重なってしまった状態です。
アンダーカットが「母材が削れすぎている」欠陥であるのに対し、オーバーラップは「溶着金属が母材と融合していない」欠陥で、原因も正反対です。
- アンダーカット:電流が高すぎる、溶接速度が速すぎるなど、入熱が過剰なときに起こりやすい
- オーバーラップ:電流が低すぎる、溶接速度が遅すぎるなど、入熱が不足しているときに起こりやすい
どちらも溶接条件の調整で防げる欠陥ですので、ビードの状態を見て、電流や速度をどちらの方向に直すべきか判断することが大切です。
アンダーカットが発生する主な原因

アンダーカットは、母材を溶かす力に対して、溶着金属を溝に流し込む量やタイミングが足りないときに発生します。具体的な原因を見ていきましょう。
溶接電流が高すぎる
最も多い原因が、溶接電流の設定が高すぎることです。
電流が高いとアークの力が強くなり、母材が深く広く溶けます。しかし、溶けた母材の量に対して溶着金属の供給が追いつかず、止端部に溝が残ってしまいます。
溶接棒には、径ごとに適正な電流範囲が決められています。「速く溶かしたい」と電流を上げすぎると、アンダーカットだけでなくスパッタの増加にもつながります。
溶接速度が速すぎる
溶接速度が速すぎると、アークで溶かした母材の溝に溶着金属が流れ込む前に、アークが先へ進んでしまいます。
その結果、溝が埋まらないままビードが細くなり、アンダーカットが残ります。
電流が適正でも、速度が速すぎればアンダーカットは発生します。ビード幅が狭く、細長いビードになっているときは、速度が速すぎるサインです。
アーク長が長すぎる
アーク長(溶接棒の先端と母材の距離)が長いと、アークが広がって熱が分散し、溶着金属が狙った位置に集まりにくくなります。
また、アークの力で溶融池が押し広げられ、止端部がえぐれやすくなります。
アーク長は、溶接棒の径と同じくらいを目安に、短めに保つのが基本です。
溶接棒の角度や狙い位置が不適切
溶接棒やトーチの角度が寝すぎている、あるいは進行方向に対して傾きすぎていると、アークの力が片側に偏り、偏った側の止端部にアンダーカットが出やすくなります。
また、隅肉溶接で狙い位置が上側の板に寄りすぎると、上側の母材ばかりが溶けて、上側の止端にアンダーカットが発生します。
隅肉溶接については、以下の記事で解説しています。
ウィービングの幅が広すぎる
ウィービング(溶接棒を左右に振りながら進める運棒)の幅を広くしすぎると、両端に溶着金属が十分に行き渡らず、ビードの両側にアンダーカットが残ります。
ウィービングの両端で一瞬止まって溶着金属を流し込む「止め」が足りない場合も同様です。
ウィービングのコツは、以下の記事で詳しく解説しています。
溶接姿勢の影響
横向き溶接や立向溶接では、溶けた金属が重力で下に垂れやすくなります。そのため、上側の止端部に溶着金属が残らず、アンダーカットが発生しやすくなります。
姿勢によって溶融池のふるまいが変わるため、下向き溶接と同じ条件のまま溶接すると、アンダーカットが出やすくなる点に注意が必要です。
溶接姿勢ごとのコツは、以下の記事で解説しています。
アンダーカットを防ぐためのポイント

アンダーカットの原因が分かれば、対策はその逆を行うことです。次のポイントを押さえておきましょう。
- 溶接棒の径に合った電流に設定する
- 溶接速度を落とし、溝に溶着金属を流し込む
- アーク長を短く保つ
- 角度と狙い位置を意識する
- ウィービングの両端で一瞬止める
- 母材や姿勢に合った溶接棒を選ぶ
こちらでは、上記6つのポイントをそれぞれ解説していきます。
溶接棒の径に合った電流に設定する
まずは、使用する溶接棒の径と姿勢に合った電流範囲を守ることが基本です。
メーカーのカタログや溶接棒の箱に記載された推奨電流を確認し、その範囲の中で母材の板厚に応じて調整します。
多層盛り溶接の場合は、最終層(仕上げ層)の電流を少し低めにすると、止端部がなじみやすく、アンダーカットを防ぎやすくなります。
多層盛り溶接については、以下の記事で解説しています。
溶接速度を落とし、溝に溶着金属を流し込む
ビードが細く、止端に溝が見えるときは、溶接速度を少し落として、溶融池が止端部までしっかり広がるのを確認しながら進めます。
溶融池の後端が丸く落ち着いた形になっているかを目安にするとよいでしょう。
アーク長を短く保つ
アーク長は短めを意識し、溶接棒が消耗して短くなっても一定の距離を保つように、手を送り続けることが大切です。
アークが「ジー」という安定した音になっているかも、アーク長の目安になります。
角度と狙い位置を意識する
溶接棒は、進行方向に対して70〜80度程度に保ち、片側に傾きすぎないようにします。
隅肉溶接では、狙い位置をルート(隅の角)に合わせ、上下の板が均等に溶けるように意識しましょう。
ウィービングの両端で一瞬止める
ウィービングを行う場合は、振り幅を広げすぎず、両端で一瞬止めて溶着金属を止端部に流し込みます。
ビードの両側が母材になじんでいるかを見ながら運棒すると、アンダーカットを防ぎやすくなります。
母材や姿勢に合った溶接棒を選ぶ
溶接棒の種類によって、溶融池の流れやすさやビードのなじみやすさが異なります。
たとえば、立向・横向など全姿勢に対応した溶接棒を使うことで、姿勢によるアンダーカットを抑えやすくなります。
WELD ALLでは、神戸製鋼(神鋼)や日鉄溶接工業の溶接棒を、用途や姿勢に合わせて幅広く取りそろえています。どの溶接棒を選べばよいか迷われた際は、お気軽にご相談ください。
アンダーカットができてしまったときの補修方法

アンダーカットができてしまった場合は、深さに応じて補修を行います。
浅く短いアンダーカットであれば、グラインダーやヤスリで溝の角をなめらかに削り、応力が集中しないように仕上げるだけで済むこともあります。ただし、削りすぎると母材の板厚が減るため、必要最小限にとどめます。
深いアンダーカットや長く続いているものは、削るだけでは強度を確保できません。
溝の部分のスラグや汚れをグラインダーで取り除いたうえで、細径の溶接棒を使い、低めの電流で溝を埋めるように肉盛り溶接を行います。その後、余盛りをグラインダーで整えて仕上げます。
補修溶接を行う際も、電流が高すぎると再びアンダーカットができてしまうため、条件は控えめに設定することがポイントです。
溶接欠陥の補修については、以下の記事も参考にしてみてください。
溶接のアンダーカット、まとめ

今回は、アンダーカットとはどのような欠陥か、発生する原因と防ぐためのポイント、できてしまったときの補修方法をご紹介しました。
アンダーカットは、溶接電流の上げすぎ、溶接速度の速すぎ、アーク長の長さ、溶接棒の角度や運棒など、溶接条件のわずかなずれで発生する欠陥です。見た目の問題だけでなく、溶接部の強度低下や割れの原因にもなるため、発生させない溶接条件を身につけておくことが大切です。
溶接条件を見直しても改善しない場合は、溶接棒の種類や径が作業に合っていない可能性もあります。
アンダーカット対策に合った溶接棒や溶接ワイヤーを揃える際は、溶接棒・溶接機材の通販専門店WELD ALL(ウエルドオール)にお任せください。
小ロットから購入できる溶接材料を幅広く取り揃えており、平日および土曜日の15時までのご入金確認で当日発送が可能ですので、ぜひWELD ALLの公式サイトで商品ラインナップをご覧ください。
