溶接スパッタって?スラグの違いは?原因と防止策を知ろう!
「溶接スパッタって溶接で飛ぶ粒のこと?詳しいことを知りたい!」と感じている方は多いのではないでしょうか。
今回は、溶接スパッタとは何かと、溶接スパッタが発生する原因をご紹介します。
さらに、スラグとの違いや、溶接スパッタが発生する原因、発生や付着の防止策などについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
溶接スパッタとは
溶接スパッタとは、アーク溶接やガス溶接の際に飛び散る金属粒のことです。
溶接をすると金属の表面にポツポツと粒が発生しますが、これが溶接スパッタです。
溶接スパッタは、溶接によって液体になった金属が飛び散ることで発生します。
溶接スパッタが発生することで、品質や周囲の作業者などに悪影響を及ぼすため、後処理をしたり発生を抑えたりといった対策が必要になるケースもあります。
溶接スパッタとスラグの違い
溶接スパッタとスラグの違いは、以下の通りです。
スパッタ |
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スラグ |
|
スラグとは、被覆アーク溶接などの際、溶接ビードの表面に発生する金属ではないカスのこと。
「のろ」とも呼ばれ、溶接の材料に使われるフラックスが溶けることで発生します。
スラグを放置すると溶接工程に悪影響があることから、溶接後に工具を使用して除去するのが基本となります。
溶接スパッタが発生する原因
溶接スパッタが発生する原因は、以下の4つです。
- 電流設定や溶接速度
- 高すぎる温度
- 不安定なアーク
- 不純物
こちらでは、上記4つのスパッタ発生原因について解説していきます。
電流設定や溶接速度
電流設定や溶接速度により、溶接スパッタが発生しやすくなります。
これは、電流設定が高すぎても低すぎても、溶融金属が不安定になるためです。
また、溶接速度が速すぎても遅すぎてもスパッタ発生につながるので、溶接初心者さんなどの慣れていない方ほどスパッタを発生させやすいともいえます。
高すぎる温度
溶接時に接合部分の温度が高すぎる場合も、溶接スパッタが発生する原因になります。
接合部分を過度な温度に熱すると、金属が急に溶けて蒸発し、溶融金属が飛び散ってしまうのです。
基本的に、溶接スパッタが発生する温度は約1,800〜3,000℃ほどとされています。
不安定なアーク
不安定なアークも溶接スパッタの発生原因となります。
アークとは、電極から母材に向かって広がる高温の強い光で、不安定になると溶融金属がまとまらずバラバラに飛び散ることからスパッタが発生しやすくなるのです。
不純物
溶接スパッタが発生する原因の1つとして、材料の不純物があります。
溶接材料に不純物が含まれるほど、必要のない化学反応を引き起こしてしまうためスパッタが発生しやすくなってしまうのです。
このため、品質が高く不純物が少ない材料の方がスパッタ発生につながりにくいといえます。
また、材料に付着した錆・油分・汚れ・塗料といった不純物もスパッタ発生の原因になるので、溶接を始める前にしっかりと清掃することが大切です。
溶接スパッタが及ぼす悪影響とは?
溶接スパッタが及ぼす悪影響は、以下の5つです。
- 外観が悪くなる
- 強度が低くなる
- 腐食しやすくなる
- スパッタの除去に手間がかかる
- 火災や体調不良の原因にもなる
こちらでは、上記5つの悪影響についてそれぞれ解説します。
外観が悪くなる
溶接スパッタは、溶接部分の外観を悪くしてしまいます。
スパッタが発生すると、溶接面に多数のポツポツができるので綺麗な見た目ではなくなり、印象が悪くなります。
さらに、溶接スパッタは外観品質を低下させるだけでなく、スパッタが付着した上からの塗装を行うと密着しづらくなり、剥離にもつながってしまいます。
強度が低くなる
溶接スパッタは、強度が低くなるという悪影響も及ぼします。
これは、スパッタとして溶融金属が飛び散ることにより、強度に関わる重要な溶接ビードの肉厚が減ってしまうからです。
また、溶接ビードの付け根部分にスパッタが発生すると亀裂にもつながる可能性があります。
腐食しやすくなる
溶接スパッタが発生すると、溶接部分に不純物が入ることとなり、腐食しやすくなるという悪影響もあります。
亜鉛めっき鋼板の溶接では、スパッタがめっき層を傷つけ、耐食性の低下を引き起こすというデメリットもあるので注意が必要です。
耐食合金の溶接でスパッタが腐食を促進させてしまうと、重大な問題にもなりかねません。
スパッタの除去に手間がかかる
溶接スパッタが発生すると、除去にも手間がかかります。
スパッタが付着した場合、皮スキやタガネといった工具を使って除去する必要がありますが、多量のスパッタを手作業で除去するには手間や時間がかかってしまうのです。
スパッタの除去に手間や時間をかけると人件費のコストが大きくなってしまうため、できるだけ発生や付着を防止する対策をした方が良いでしょう。
火災や体調不良の原因にもなる
溶接スパッタは、火災や体調不良の原因にもなります。
スパッタが周囲の木くずや布などの可燃物に飛ぶことで、火災が起こる可能性があるのです。
他にも、タンクやドラム缶など内部に油やガスが入っているものを置いていると火災の危険性が高まります。
加えて、スパッタは有毒ガスを吸着するため、頭痛やめまいなど体調不良も引き起こしかねません。
溶接スパッタの発生・付着を防止するには?
溶接スパッタの発生や付着の防止策は、以下の4つです。
- 電流設定や溶接速度を適切にする
- スパッタスプレーなどのグッズを活用する
- 溶接の技術を向上させる
- 清掃・換気を行う
こちらでは、上記4つの防止策について解説していきます。
電流設定や溶接速度を適切にする
溶接スパッタの発生を防止するため、電流設定や溶接速度を適切にしましょう。
電流が高すぎても低すぎても、溶接速度が速すぎても遅すぎても、スパッタ発生原因になるので適切に調節する必要があります。
また、溶接ワイヤの送給が不規則になっても電流値の乱れにつながるため、ワイヤ送給を安定させることも対策の1つとなるでしょう。
スパッタスプレーなどのグッズを活用する
スパッタスプレーなどのグッズを活用して溶接スパッタの発生や付着を防止してみましょう。
スパッタ対策のグッズは以下のようなものがあります。
- スパッタスプレー:溶接前にスプレーすると、スパッタの付着防止や除去が簡単になる
- スパッタシート:発生するスパッタなどを受け止め、人や物を守るためのグッズ
- フラックスコアードワイヤ:アーク安定剤などが内部に入ったワイヤの種類で、スパッタが発生しづらいのが特徴
グッズでも上記のように防止ができるため、電流や溶接速度などの対策と合わせて取り入れてみましょう。
溶接の技術を向上させる
溶接の技術を向上させることでも、スパッタの発生を抑えることができます。
技術を向上させることで適切な角度や速度などがわかり、結果的にスパッタが発生しづらい溶接につながるでしょう。
溶接技術を向上させるには、実践だけでなく定期的な訓練をしたり、全国で開催されている研修コースを受講したりといった方法があります。
清掃・換気を行う
溶接スパッタが火災や体調不良を引き起こす可能性があるので、清掃や換気を入念に行いましょう。
溶接作業を行う場所から約5mの範囲に燃え移るものがないよう清掃し、有毒ガスから身を守るために十分な換気ができる場所を選ぶのが大切です。
塵や埃も火種になる危険性があるので、周囲を入念にチェックしましょう。
溶接が終わった後も発火する恐れがあるため、溶接後1時間以上は火災の危険がないか見回るのもポイントです。
溶接スパッタ、まとめ
溶接スパッタとは、溶接の際に飛び散る金属粒のことで、似た言葉のスラグとは、金属ではないビード表面に発生するカスのことです。
「溶接スパッタを防止したい!」という方は、今回ご紹介した防止策を参考に、グッズの使用や技術の向上などに取り組んでみましょう。
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