隅肉溶接とは?開先溶接と異なる点や押さえるべき溶接記号などを解説!
こんにちは、溶接棒・溶接機材の通販専門店 WELD ALL(ウエルドオール)です。
「隅肉溶接について詳しく知りたい!」「開先溶接と何が違うの?」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。
隅肉溶接についてなんとなく理解している場合も、関係する溶接記号や注意すべきポイントを知っている方は少ないでしょう。
今回は、隅肉溶接とは何か、そして隅肉溶接と開先溶接の違いをご紹介します。
さらに、隅肉溶接に関係する溶接記号や注意すべきポイントなどについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
隅肉溶接とは?
隅肉溶接とは、アーク溶接の手法の1つで、ほぼ直行する2つの面の隅を、断面が三角形状になるように溶着金属を盛る溶接のことです。
片側からだけ隅肉溶接することを「片側溶接」といい、両端面を隅肉溶接することを「両側溶接」といいます。
隅肉溶接は母材同士に隙間ができることから、比較的強度が低くなる特徴があります。
隅肉溶接と開先溶接の違い
隅肉溶接と比較される溶接手法に「開先溶接」というものがあります。
開先溶接とは、溝上のくぼみ(開先加工)が施された母材を接合する方法で、隅肉溶接と異なり、高い強度が必要な場合の溶接として使われます。
開先の形状を調整することで、溶接の深さ・幅・接合面積が変化し、強度を高めることができるのも特徴です。
このため、一般的に隅肉溶接は梁のウエブなどに活用され、開先溶接は強度部材の溶接などに用いられます。
隅肉溶接で使われる溶接継手の種類
隅肉溶接で使われる溶接継手の種類は、主に以下の通りです。
T継手 | 一方の板の断面を、別の板の表面に載せて直角(T字形)になるように溶接すること。 |
かど継手 | 母材2つが、ほぼ直角になった状態(L字形)で角に溶接をすること。 |
重ね継手 | 2つの母材の一部を重ねた状態で溶接をすること。 |
隅肉溶接を行う際は、上記3つの継手を押さえておきましょう。
隅肉溶接をするなら!知っておきたい溶接記号
隅肉溶接をするときに知っておきたい溶接記号には、以下の5種類があります。
- 表面形状
- 裏当て
- 裏波溶接
- 非破壊検査
- 現場溶接
こちらでは、上記5つの溶接記号について解説します。
表面形状
隅肉溶接による表面形状を表す溶接記号は、以下の4つがあります。
平ら | 「直線」で表記される |
凸 | 「上カッコ」で表記される |
へこみ | 「下カッコ」で表記される |
止端仕上げ | 「錨のような形」で表記される |
上記の溶接記号によって、ビードの表面仕上げの方法を指示することができます。
ちなみに、「止端仕上げ」は溶接止端部をグラインダーで滑らかにし、疲労強度を改善させるための仕上げのことです。
裏当て
裏当てというのは、溶接の反対面に「裏当て金」を置く溶接の方法のことです。
裏当てを行う場合、基本記号の反対に表記することで指示が可能となります。
裏当て金を配置して母材と共に溶接することで、反対側への溶け落ちを防ぐことができるというメリットがあります。
裏波溶接
裏波溶接とは、突合わせ溶接時、ビードでルート側面の隙間を覆う方法のことです。
裏波溶接を指示する際は、「基線と黒の半円」を使って表します。
基本記号の反対に書き、記号の前に数字を書くことでビードの高さを表記できます。
非破壊検査
外観検査と併用して壊さずに欠陥を調べたいときは、2段の基線の上段に非破壊検査の溶接記号を使用します。
この場合、「放射線透過試験」や「超音波探傷試験」によって内部の欠陥があるかどうかや、欠陥の形などを調査していきます。
現場溶接
現場溶接とは、組み立ての現場で溶接をする方法のこと。
矢と基線がつながる箇所に旗記号を使用し、現場溶接を指示することができます。
工場での溶接が一般的ですが、場合によっては設備の整った組み立て現場で溶接を行う際に現場溶接の記号が使われます。
隅肉溶接で設定される寸法
隅肉溶接で設定される寸法は、以下の3つです。
- 脚長
- のど厚
- サイズ
こちらでは、上記3つについてそれぞれ解説します。
脚長
隅肉溶接においての「脚長」とは、溶接する2つの面が交わる線から、止端までの寸法のことを表します。
縦方向と横方向の脚長が同じ場合は「等脚」、縦方向と横方向の脚長が異なる場合は「不等脚」と呼ばれます。
脚長の長さは、一般的に板厚の70%ほどになるので、長さの指定がない場合は目安にしてみましょう。
のど厚
隅肉溶接においての「のど厚」とは、溶接金属の断面の厚みのこと。
表面までの最短距離のことを「実のど厚」と呼び、サイズで定められた三角形の継手のルートから測った設計計算で使われる高さのことを「理論のど厚」と呼びます。
強度を保つためには十分なのど厚になっているかどうかが重要なので、必ず確認するようにしましょう。
一方、余盛りが大きすぎる場合、ひび割れなどが発生するケースもあるので、注意する必要があります。
サイズ
隅肉溶接においての「サイズ」とは、隅肉溶接の大きさを表すために使われる寸法のことを指します。
厚みが異なる母材を使用する場合は、隅肉溶接のサイズを薄い方の母材以下に設定しましょう。
もしも、サイズが大きすぎてしまう場合、ひずみが大きくなってしまうなどの原因にもなりかねません。
隅肉溶接における「有効長さ」と「有効断面積」の計算方法
隅肉溶接における「有効長さ」と「有効断面積」の計算方法は、以下の通りです。
- 有効長さの求め方: 溶接長さ - 2S(サイズ)
- 有効断面積の求め方:有効長さ × のど厚
隅肉溶接では両端が細くなることから、有効長さを求める際は溶接長さからサイズ×2を引く計算となります。
隅肉溶接を行ううえで注意すべきポイント
隅肉溶接を行ううえで注意すべきポイントは、以下の3つです。
- 引張力がかかる場合は使用しない
- 胴突き状態の差し込み溶接はしない
- 熱影響部が重ならないように考慮する
こちらでは、上記3つの注意ポイントについて解説します。
引張力がかかる場合は使用しない
隅肉溶接の注意すべきポイントとして、引張力がかかる場合は使用しないことが挙げられます。
これは、隅肉溶接では十分に溶け合っていない部分が発生しがちのため、両側を外側に引っ張る力がかかるようなケースには強度が足りない恐れがあるからです。
隅肉溶接を行う場合は、引張力がかかる部分ではなく、せん断力のかかる部分に活用しましょう。
胴突き状態の差し込み溶接はしない
隅肉溶接を行う際は、胴突き状態の差し込み溶接はしないという点にも注意しましょう。
胴突き状態の差し込み溶接をすると引張力により、割れが発生する可能性があります。
差し込み溶接の際は、先端を1〜2mmほど開ける設計にすることを心掛けましょう。
熱影響部が重ならないように考慮する
隅肉溶接を行ううえでの注意点として、熱影響部が重ならないように考慮するというものもあります。
例えば、熱影響部が重なって熱影響が大きくなってしまう「十字継手」や「クロス継手」は設計を見直し、重ならないようにずらして溶接をすると良いでしょう。
隅肉溶接とは、まとめ
隅肉溶接とは、ほぼ直行する2つの面の隅を溶接するために使われるアーク溶接の手法の1つです。
隅肉溶接を行う際は、引張力がかかる部分ではなく、せん断力のかかる部分に用いることを押さえておきましょう。
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