多層盛り溶接の手順やコツを解説!「層数」「パス数」の決め方も紹介

こんにちは、溶接棒・溶接機材の通販専門店 WELD ALL(ウエルドオール)です。
多層盛り溶接は、技術力によって外観に影響を及ぼしたり、融合不良をはじめとする欠陥につながったりなど、初心者と熟練の溶接工で結果に差が出やすい溶接手法です。
欠陥が発生すると補修にも時間がかかるため、多層盛り溶接を上手く行う方法を知りたい方も多いでしょう。
今回は、多層盛り溶接とは何かや、具体例として「3層隅肉溶接」での溶接手順、知っておきたいコツをご紹介します。
さらに、多層盛り溶接が必要かどうかの判断方法、「層数」「パス数」の決め方、多層盛り溶接に適した溶接材料についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
多層盛り溶接とは

多層盛り溶接(多層溶接)とは、ビードを1回だけではなく2回以上重ねる溶接手法のことです。
厚板溶接など、ビードを1回引くだけの溶接(シングルパス溶接)では、図面指示の脚長に足りない場合があります。
多層盛り溶接であれば、複数回で2層以上ビードを重ねるため、必要な脚長を確保することができるのです。
脚長について知りたい方は、以下の記事で解説しているので参考にしてみてください。
多層盛り溶接が必要かどうかの判断方法

多層盛り溶接が必要かどうかは、「以下の条件に当てはまっているか」で判断できます。
- 隅肉溶接を行う場合で、必要な脚長が8mm以上ある
- 開先溶接を行う場合で、母材の厚みが4mm以上ある
- 図面で多層盛り溶接が指示されている
- 入熱による変形を抑えたい
- 機械的性質や強度の低下を防ぎたい
必要な脚長やのど厚を確保するのにシングルパス溶接では難しい場合、多層盛り溶接を行うことが適切です。
また、図面指示に「3層3パス」といった文言があれば、多層盛り溶接の指示となります。
他にも、シングルパス溶接を用いると入熱量が大きくなってしまい、「変形」や「機械的性質や強度の低下」のリスクが高まる場合も、多層盛り溶接が適するケースがあります。
多層盛り溶接の「層数」「パス数」の決め方

多層盛り溶接の「層数」「パス数」の決め方を知る前に、まずはそれぞれの意味を知っておきましょう。
| 層数 | 建物の階数と同じく、ビードを重ねてつくる高さ方向の層のこと。最初の1層目を「初層」、最後につくる層を「表層」という。 |
| パス数 | ビードを引く回数のこと。1階層あたりに2回以上のビードを引くこともある。 |
例えば、「4層6パス」という指示であれば、1層目と2層目は1パスずつ、3層目と4層目は2パスずつ引くことで、合計4階層に6パスが引かれるといった具合です。
多層盛り溶接の「層数」「パス数」を決める際は、以下の2点を考慮する必要があります。
- 必要な脚長
- 入熱量の管理
1パスでつくれるビードの脚長は最大で7〜8mm程度なので、例えば脚長が10mm必要な場合は2層2パス以上必要になります。
開先溶接の場合は、開先間隔が狭い初層を1パスで行い、開先間隔が広くなるに連れて1層あたり2パス以上で行うケースもあるでしょう。
また、層数とパス数を決める際は、小さなビードでパス数を増やした方が入熱量が抑えられることもふまえて、1層あたりのパス数を可能な範囲で増やすことも検討してみてください。
「3層隅肉溶接」での溶接手順

「3層隅肉溶接」を例に、半自動溶接での具体的な溶接手順を解説します。
「1層目」「2層目」「3層目」の溶接手順をそれぞれ解説するので、溶接作業の参考にしてみてください。
1層目の盛り方
1層目(初層)は、ビードが盛り上がりのある土台になるようにソリッドワイヤで溶接します。
トーチ角度は45度を意識し、下板側の脚長を確保するイメージでビードを引きましょう。
2層目の盛り方
2層目は、溶け込みの良いフラックス入りワイヤーに切り替え、下板側に必要な脚長を確実に確保することを念頭に、トーチ角度は45度で1層目に被るようにビードを引きます。
1パスで不足する場合は2パス以上で2層目をつくると良いでしょう。
3層目の盛り方
3層目は、上板側の脚長を確保しながら、ビードの断面が45度の直角三角形になるように、均一に盛り上がることを意識して溶接します。
重力の影響でビードが垂れることを防ぐために、トーチ角度は15度を意識し、電流は高くなりすぎないように調整するのがおすすめです。
多層盛り溶接を成功させるために!知っておきたいコツ

多層盛り溶接を成功させるためには、以下5つのコツを押さえておきましょう。
- 脚長のラインを書いてから溶接する
- 開先についた油脂や水分は取り除く
- 根元まで熱が届くように溶接条件を設定する
- 1パスで無理に脚長を確保しようとしない
- クレーター位置をずらして溶接する
こちらでは、上記5つのコツをそれぞれ解説していきます。
脚長のラインを書いてから溶接する
「脚長を揃えるのが難しい」という方は、溶接の前に脚長のラインを石筆で書くのが一押しです。
多層盛り溶接では複数のパスで脚長を確保しながらきれいに溶接する必要があるため、慣れるまではこの方法を実践すると良いでしょう。
開先についた油脂や水分は取り除く
開先についた油脂や水分、溶接材料に付いた不純物は取り除いてから溶接を始めることで、ブローホールの発生を防ぐことにつながります。
また、スラグ巻込みを防ぐために、前パスのスラグを丁寧に除去することも欠かせません。
根元まで熱が届くように溶接条件を設定する
厚板を多層盛り溶接する際は、入熱量が不足して融合不良になるリスクが高いです。
溶接電流・電圧・速度を適切に設定したうえで、アーク長が長くならないようにキープすると融合不良を防ぎやすくなります。
1パスで無理に脚長を確保しようとしない
1パスで無理に脚長を確保しようとすると、高い電流設定によってビードが重力で垂れ、アンダーカットが発生してしまいます。
無理に1パスで溶接しようとせず、パス数を増やして溶接を行いましょう。
クレーター位置をずらして溶接する
多層盛り溶接では、各層のビード終端に発生するクレーターの位置が重なりやすいため、クレーター割れという欠陥が発生しがちです。
対策のために、各層の終点(クレーターの位置)が重ならないように始点と終点を調整しながらビードを引くのが良いでしょう。
多層盛り溶接で欠陥が起きてしまったときの対処法

放射線透過試験(RT)で多層盛り溶接の欠陥を発見した際は、グラインダーなどで欠陥を削って除去し、補修溶接を行う流れになります。
補修溶接後の再検査に合格するためにも、溶接条件を見直して原因を改善することも忘れずに行いましょう。
また、TIG溶接の場合、タングステン巻き込みの対処のために、溶融池とタングステンが接触したらすぐにグラインダーで削るという方法がおすすめです。
多層盛り溶接に適した溶接材料

多層盛り溶接には、目的に適した以下のような溶接材料を選びましょう。
| 低水素系 | 建築鉄骨や高張力鋼の溶接に適しているうえ、耐割れ性に優れ、水素起因の欠陥を抑えられる溶接材料。 |
| 重強度部材全姿勢溶接用 | 溶接強度を求められる重強度部材に適している。 |
| 突合せ及びすみ肉溶接用 | 突合せ溶接とすみ肉溶接に広く使用される溶接材料。 |
| 厚板全姿勢溶接用 | 厚板の溶接に適している。 |
多層盛り溶接、まとめ

今回は、多層盛り溶接とは何かや、具体例として「3層隅肉溶接」での溶接手順、知っておきたいコツなどをご紹介しました。
多層盛り溶接に使用する溶接棒や溶接ワイヤーを揃える際は、溶接棒・溶接機材の通販専門店WELD ALL(ウェルド・オール)にお任せください。
小ロットから購入できる溶接材料を幅広く取り揃えており、DIYからプロ溶接まで対応しているので、ぜひWELD ALLの公式サイトで商品ラインナップをご覧ください。
