溶接における強度とは?継手効率や規格、検査方法なども解説!
こんにちは、溶接棒・溶接機材の通販専門店 WELD ALL(ウエルドオール)です。
「溶接をした部分の強度が心配…」「溶接の強度を知るにはどうしたら良いのだろう」と悩んでいる方は多いでしょう。
今回は、溶接における強度とは何か、強度が求められる場合に使われる溶接方法、強度を知るために重要な「継手効率」についてご紹介します。
さらに、隅肉溶接の強度計算方法や、強度が定められている規格、溶接部の強度を保証するための代表的な検査方法などについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
溶接における強度とは
溶接における強度とは、溶接する製品の溶接部における強度のこと。
溶接においては「求められる強度の基準を満たしていること」が基本的な品質条件に含まれており、高品質な製品をつくる際には欠かせないポイントとなります。
設計や溶接を正しく行うことで十分な強度を得られますが、適切な方法で行われない場合、応力集中や母材の硬化、溶接欠陥などの影響で溶接部が破損することもあります。
このため、溶接継手の許容応力(安全に機能を発揮できる最大の応力)は「溶接継手の種類」や「荷重の種類」によって定められており、例えば「突合せ溶接継手なら母材の引張許容応力の0.9~1.0にする」といった条件があります。
溶接継手の強度は母材と比べて低い?高い?
「溶接では金属を溶かして部材を接合させるため、強度は母材と比べて低くなってしまうのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、基本的に溶接継手の強度は母材と同じとみなされます。
一方、「高張力鋼やアルミ合金の大入熱溶接」や「加工硬化したオーステナイト系ステンレス鋼や熱処理アルミ合金の溶接」の場合は熱影響部が軟化するため、溶接金属の強度が母材よりも低くなることもあります。
もちろん、適切な溶接ができていなければ、溶接欠陥が発生して強度が低下するリスクがあるため、溶接の環境や溶接姿勢などに注意して適切に作業することが重要です。
強度が求められる場合に使われる溶接方法
強度が求められる場合に使われる溶接方法は「完全溶け込み溶接」です。
完全溶け込み溶接とは、母材の開先の断面全体を完全に溶け込ませて一体化させる溶接方法のこと。
完全溶け込み溶接を用いると、溶接部が母材と同じ強度とみなされるため強度計算を行う必要がなく、強度が求められる溶接の多くはこの溶接方法が使われています。
一方、ほぼ直行する2つの面の隅に溶着金属を盛る「隅肉溶接」という方法の場合、母材同士に隙間ができることから比較的強度が低くなってしまいます。
溶接継手の強度を知るために重要な「継手効率」とは?
溶接継手の強度を把握するためには「継手効率」を知ることが重要です。
継手効率とは、「母材の強度」に対する「溶接継手の強度」の比率のことで、母材に対して溶接部の強度が信頼できるかを判断する指標となります。
継手効率は、以下の式を用いて表すことができます。
【継手効率の計算式】
継手効率(%)=「溶接継手の強度」 ÷ 「母材の強度」
例えば、荷重によって溶接継手ではなく母材に破断が生じた場合、母材の強度よりも溶接継手の強度が高いとして継手効率は100%以上と考えることができます。
逆に、荷重によって母材ではなく溶接継手が破断した場合、継手効率は100%を下回ることがあります。
ちなみに、母材よりも溶接金属の強度が高い継手を「オーバマッチ継手」といい、母材の強度を下回る場合は「アンダマッチ継手」といいます。
隅肉溶接の強度計算方法
隅肉溶接の強度計算は、以下の式で行います。
【隅肉溶接の強度計算式】
隅肉溶接継手の強度σf = 溶接部の降伏応力 ÷ (のど厚 × 溶接線の長さ)
「のど厚」とは、溶接金属の余盛りの部分を除いた断面の厚みのことです。
「のど厚=0.707×脚長(溶接継手の付け根から止端までの寸法)」の計算式で求めていきましょう。
溶接の強度が定められている規格
溶接の強度が定められている規格は、以下のものが代表的です。
規格の種類 | 概要 |
鋼構造設計規準 | 日本建築学会により発行された鉄骨造の構造計算に関する規準。材料の強度を基準に突合せ溶接かそれ以外かで算出法がわかれている。 |
道路橋示方書 | 橋や高架の道路の技術基準。溶接サイズ過大によるひずみや、過少による急冷割れを防ぐため、溶接サイズの最大値および最小値の基準が示されている。 |
JIS B 8265(圧力容器の構造) | 圧力容器の設計にあたって許容応力の決め方が記載されている。 |
ASME(米国機械学会規格) | ボイラ及び圧縮容器基準において、溶接施工方法や溶接施工方法確認試験などの基準を規定している。 |
AWS(米国溶接学会) | 国際的な規格として品質を保つための溶接手順などの基準を規定している。 |
上記のように、溶接には様々な規格があるため、これらの規格で規定された基準に沿った設計をすることが重要です。
強度に影響を与える「溶接欠陥」の種類
強度に影響を与える「溶接欠陥」の種類は、以下の通りです。
強度に影響を与える「溶接欠陥」の種類 | 特徴 |
アンダーカット | 溶接ビード止端部にできる溝のこと。溶接電流や溶接速度が高すぎることで発生する。 |
オーバーラップ | あふれ出た溶融金属が母材に融合せず止端に重なったもの。溶接速度が低く、溶着金属量が過剰になることで発生する。 |
スラグ巻き込み | スラグが溶接金属内に残ってしまうこと。スラグ除去が不十分なことや、多層盛り溶接で発生することが多い。 |
ピンホール | ビードの表面にできる針で刺したような小さな穴のこと。シールドガスの不足などが原因になることがある。 |
ブローホール | ガスが溶接金属内に閉じ込められてできる球状の空洞のこと。シールドガスの不足などが原因になることがある。 |
溶け込み不良 | 設計と比べて溶込みが不足していること。溶接電流が低いことや溶接速度が高いことが原因になる。 |
融合不良 | 金属が十分に溶け合わず隙間ができてしまうこと。開先角度が狭い場合や前層のスラグ除去ができていない場合などで発生する。 |
割れ | 溶接中や直後に溶接金属の表面に発生するひび割れのこと。凝固温度の低下や溶接時に発生する収縮応力が主な原因となる。 |
上記のような溶接欠陥は強度に大きく影響することがあり、製品としての強度が不十分になるリスクがあります。
溶接部の強度を保証するための代表的な検査方法
溶接部の強度を保証するためには、「非破壊検査」という溶接部を壊すことなく欠陥がないかをチェックする検査の実施が大切です。
非破壊検査の代表的な検査方法は、以下の通りです。
- 放射線透過試験(RT)
- 浸透探傷検査(PT)
- 磁粉探傷検査(MT)
- 超音波探傷検査(UT)
こちらでは、上記4つの検査方法について解説します。
放射線透過試験(RT)
放射線透過試験(RT)は、試験体に放射線を照射し、内部の状態をフィルムに記録して検査する方法です。
この検査方法では、金属材料や非金属材料も検査できるうえ、欠陥があるとフィルム上に黒い像として現れるため、視覚的にわかりやすく内部の欠陥を検出することができる利点があります。
浸透探傷検査(PT)
浸透探傷検査(PT)は、検査液を表面に塗ることで細かな傷を検出する検査方法です。
表面上にある線状や円形状の欠陥を検出でき、金属や非金属の材料に関わらず検査できるという利点があり、幅広い分野で使用されています。
磁粉探傷検査(MT)
磁粉探傷検査(MT)は、磁化した試験体に磁粉剤を吸着させ、磁粉模様の形によって欠陥を検出する方法です。
この検査方法では内部欠陥の確認はできず、磁石に吸着しない素材を検査することは不可能ですが、目視観察でも精度高く検出できるという特徴を持っています。
超音波探傷検査(UT)
超音波探傷検査(UT)は、超音波を試験体に発信し、反射して戻ってきた超音波を解析して内部や表面の欠陥の位置、さらに大きさを検出する検査方法です。
厚い金属でも検査を行えますが、超音波に影響がある表面が粗い材料、もしくは形状が複雑な材料では検査が難しくなることもあります。
溶接強度、まとめ
今回は、溶接における強度とは何かや、強度が求められる場合に使われる溶接方法、強度を知るために重要な「継手効率」などについてご紹介しました。
溶接部の強度が心配な方は、完全溶け込み溶接を用いたり、溶接欠陥がないように検査をしたりなどの対策をしてみましょう。
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