裏波溶接の特徴やメリットとは?手順や押さえるべきポイントも解説!
こんにちは、溶接棒・溶接機材の通販専門店 WELD ALL(ウエルドオール)です。
「溶接で裏波を出す『裏波溶接』という溶接法について詳しく知りたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。
プロの溶接職人はもちろん、DIYで溶接の腕を磨いている方、企業の設計担当や購買担当の方も、「裏波溶接の知識を得て製品の品質を高めたい」と考えているでしょう。
そこで今回は、裏波溶接の特徴や、裏波溶接をするメリット、裏波溶接の手順3ステップをご紹介します。
さらに、裏波溶接で用いられる溶接方法や、裏波溶接の際に押さえるべきポイントなどについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
裏波溶接とは?
裏波溶接とは、表面からの溶接により裏面(内面)も溶かし込み、まるで裏側から溶接したかのように裏面にビードを形成する溶接法のことで、「完全溶込み突合せ溶接」とも呼ばれています。
「裏面に継ぎ目ができない」「溶接トーチが内側に入らないものでも裏面の溶接ができる」という特徴があり、食品や医療の原料輸送、配管やタンクの製造など、様々な分野で利用されています。
裏波溶接をするメリット
裏波溶接をするメリットは、以下の3つです。
- 液溜まりや異物混入を防げる
- 接合箇所の強度が高まる
- 外観が美しく仕上がる
こちらでは、上記3つのメリットについて解説します。
液溜まりや異物混入を防げる
裏面に継ぎ目ができない裏波溶接では、接合部分に隙間がないため、液溜まりや異物混入(コンタミ)を防ぐことができます。
このため、「食品や医療などの分野で、安全に原料輸送をしたい」「配管・タンクの液溜まりや異物混入を防ぎたい」というケースなどで広く利用されています。
接合箇所の強度が高まる
裏波溶接では、裏面にビードがつくられ、接合部分の継ぎ目がなく一体化するため、強度が高まったり圧力や負荷の耐性が向上したりするメリットがあります。
このため、熱膨張の影響がある温水配管や、長期間の負荷が想定される構造物などで裏波溶接が利用されています。
外観が美しく仕上がる
高い技術によって凹凸のない裏波溶接ができれば、なめらかで均一な美しいビードが内面にも形成され、美しい外観に仕上がります。
美しいビードに仕上がることから、外観の良さが求められる製品にも用いられています。
裏波溶接で用いられる溶接方法
裏波溶接で用いられる溶接方法として一般的なのは、「TIG(ティグ)溶接」というタングステン電極と不活性ガスを用いた溶接方法です。
TIG溶接が裏波溶接で一般的に利用されるのは、「溶接速度が遅い」「アークがソフトである」という特徴によって、裏波形成がしやすいからです。
一方、TIG溶接だけでは溶接速度が遅く時間がかかりすぎるので、「1層目はTIG溶接で裏波を形成」「2層目以降は溶接速度の速いMIG(ミグ)溶接を使う」というように、溶接方法を変えることも多いです。
裏波溶接に適した開先形状
裏波溶接に適した開先形状は、「V形」「逆台形」「U形」の3つです。
開先とは、適切な溶け込みを得るために溶接継手に設けられるくぼみのことで、様々な種類の開先形状が存在します。
中でも「V形」「逆台形」「U形」が裏波溶接に適しているのは、ルート部にアークを集中させることができ、裏波形成がしやすくなるからです。
裏波溶接の手順3ステップ
裏波溶接の手順3ステップは、以下の通りです。
- ステップ1:バックシールドを行う
- ステップ2:1層目の溶接
- ステップ3:2層目(最終層)の溶接
こちらでは、上記3ステップを順を追って解説していきます。
ステップ1:バックシールドを行う
裏波溶接の最初のステップでは、アルゴンガスなどの不活性ガスを使用してバックシールドを行います。
バックシールドとは、裏面にガスを流し、裏波ビードを酸化から守ることです。
バックシールドが不足すると、ビードが不揃いになったり、裏波ビードにおける形状の凹凸が大きくなったりしてしまいます。
特に、酸化に弱い素材(ステンレス鋼など)を使用する場合、製品の耐久性に大きな悪影響を与えてしまうので、バックシールドをしっかり行うことが大切です。
裏波の酸化を適切に防ぐためにも、バックシールドは2層目の溶接が完了するまで行いましょう。
ステップ2:1層目の溶接
バックシールドをした後に、1層目の溶接を始めます。
1層目はTIG溶接を使用し、しっかりと裏波形成をしていくことがポイントです。
熱が不足すると裏波がきちんと形成されませんが、熱を加えすぎても溶けすぎてしまうので注意しましょう。
ステップ3:2層目(最終層)の溶接
2層目(最終層)の溶接も、バックシールドを行った状態で進めていきましょう。
最終層の溶接が終わった後は裏波を確認し、きれいな形状になっているかや、酸化していないかなどをチェックします。
裏波溶接を行う際の細かなチェックポイントは、次章で解説していきます。
裏波溶接の際に押さえるべきポイント
裏波溶接の際に押さえるべきポイントは、以下の5つです。
- ルート間隔の広さは適切か
- 開先部の酸化皮膜を除去できているか
- 裏面のビードが凹凸になっていないか
- 開先や溶接棒の溶け残りがないか
- 途切れがなく全周がつながっているか
こちらでは、上記5つのポイントをそれぞれ解説していきます。
ルート間隔の広さは適切か
裏波溶接の際は、ルート間隔の広さが適切かを確認しましょう。
ルート間隔が広いと裏波を出しやすくなりますが、広すぎると溶落ちが発生しやすくなり、逆に狭すぎると溶け残りが起こりやすくなります。
最初はルート3mmから始めて、裏波が出ていないならルート間隔を広くしていくことで、自分好みのルート間隔がどの程度かを知ることができるでしょう。
開先部の酸化皮膜を除去できているか
裏波溶接を行う際は、溶接前に開先部の酸化被膜を取り除くなどの前処理を行うことも大切です。
開先部の酸化被膜を適切に除去できていない場合、融合不良の発生につながることがあります。
裏面のビードが凹凸になっていないか
裏波溶接後は、裏面のビードが凹凸になっていないかをチェックしましょう。
適切な状態ビードは、0.2mm〜1mm程の盛り上がりであり、0.5mm以上凹んでいると強度に悪影響があります。
また、凹凸のある状態になってしまっている場合、液溜まりや異物混入を防げなくなる可能性があるので、溶接棒の挿入方法や電流の調整などを見直してみましょう。
開先や溶接棒の溶け残りがないか
裏波溶接を行った後は、開先や溶接棒の溶け残りがないかもチェックしましょう。
溶け残りがある場合、接合部分の強度が弱くなることや、異物混入を防げなくなることなどの悪影響につながるため、補修が必要となります。
目視でのチェックをし、開先の溶け残りがないか、溶接棒が裏波に残っていないかを確認しましょう。
途切れがなく全周がつながっているか
裏波溶接の後は、途切れがなく全周がつながっているかも確認しましょう。
全周がつながっていなければ接合部分の強度が弱まるうえ、液溜まりや異物混入を防げなくなってしまいます。
全周がつながっていない場合には、仮付けの部分に注意して溶接をすることや、電流や速度を適切に調整することを意識して対策してみましょう。
裏波溶接、まとめ
裏波溶接とは、表面からの溶接だけで裏面も溶かし込み、裏面にビードを形成する溶接法のことです。
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